第4回 変人ファイル1「オープンソースの家」

facebookで昔の友人とつながり、久しぶりにリアル会う。
SNSの普及によって、最近では良くあることになったんではないでしょうか?

私も最近、中学校/高校時代の友人をfacebookで発見することが多くなりました。

そして、お盆中に中学校時代の友人と15年以上ぶりに再会しました。

この時代の友人って久しぶりにあってもよそよそしさがないというか、中学生当時のノリにすぐに戻れて、よいものですね。

さて、今回は建築界のギークこと、レビ設計室の「中川純」さんをご紹介してみたいと思います。

実は彼も私の中学3年生の時のクラスメイトで、facebookで再会しました。

お盆で実家に帰る途中の最寄駅で、その本人を目撃!!
あれ?でも十何年も経ってるし、似た人かなと思って、その場では声かけず。

facebookのプロフィールから今なにをやっているのだろうと辿ると、「GPLの家」というキーワードが目に飛び込んできました。

「GPL」ってオープンソースでよく使われている「General Public License」の「GPL」か?

英語3文字の略語なんてよくかぶるから、建築用語かなんかかな?と思って少し調べたら、やっぱりオープンソースの世界と同じ「General Public License」の家、ということで間違いないらしい。

こりゃ飲みに行くしかないとのことで、実家に到着し、さっそくfacebookで以下のやりとりを交わしました。

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8月14日
内 信史:
久しぶり!さっき実家帰りに初石で中純らしき人みかけたが、初石いた?

中川 純:
久しぶり~。いたよ!

内 信史:
やっぱ!声かければよかった。
お盆休みなの?

中川 純:
気づかなかった~。いま期間限定で初石に住んでますわ。

内 信史:
へーそうなんだ、明日とか時間ない?飲みに行きたい、プラスでちと簡単な取材というか、オープンソースの記事かいてて、中純のGPLの家っていいネタだなと思って!

中川 純:
おー、あいてるよ。てかオープンソースやってるのかい?

内 信史:
おー、じゃあ初石で飲もうぜ。初石駅前待ち合わせで何時が都合いい?

中川 純:
20時くらいでOK?念のため電話番号お知らせします~。090xxxxxxxx

内 信史:
20時オッケー。私の番号090xxxxxxxxです。じゃあ明日楽しみにしてるよ

中川 純:
了解~
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このような経緯で、直接会い、彼が携わっている「GPLの家」について聞く機会を持ちました。

オープンソースソフトウェアがソースコードを公開しているように、「GPLの家」も当然その設計内容、レシピを公開しているんだそう。

ソフト業界じゃなくて建築物なのにGPLって時点で異端なのですが、彼が公開している「GPLの家」の特徴としては、各材料の原価がどれだけかかっているかという費用構造、見積情報まで公開してしまっているという点です。

その背景には、
・「住宅産業の価格の不透明性に対するオープン化の意識」
・「設計を公開することによる産業自体の底上げ」

という動機が伺えました。

ユーザーが住宅の装備で取捨選択をする場合、限られた予算内で床暖房を入れるか、ガラスを二重にするか、ディスポーザーを付けるか等を選択するわけですが、本来は、それらの組み合わせ構成と効果と価格によって判断すべきです。

しかし、ハウスメーカーや工務店、建売などの住宅の売り手は、住宅の価格体系をブラックボックスにして売っているため、判断材料がない状態で勧められるがまま、不条理な買い物をしてしまいがちです。

例えば、
「このシステムキッチンは高いので諦めましょう。けれどもあまった予算でリビングに床暖房は設置できそうです。

おばあちゃんの部屋にも床暖房を入れるためには、家全体の窓を安いシングルガラスにして予算を確保しましょうか、云々」

という風に各論を重ね、せっかく床暖房を入れたのにもかかわらず、熱的に不利になるシングルガラスを多用し、最終的に何を目指していたのか分からない住宅になる、といったことになりかねません。

そうならないためにまず、構成、価格をオープンにして、住宅産業の体質を変えるというのが、「GPLの家」という試みなんだそうです。

ソフトウェア業界のようにオープンソースが認知された業界でないフィールドで、家をGPLで公開したことによって、業界内の既得権益で利益をあげてきている人々からは、反発もあることでしょう。

しかし、自分より若い建築家からの問い合わせや反響も多く、この点が「設計を公開することによる産業自体の底上げ」の一旦を担っているという励みになっているようです。

内:
「僕のいるソフトウェア業界もそうだけど、結局オープン化が進んだ究極としては、自分の業界自体の価格破壊と食い扶持を減らすことになるのかねー。」

中川:
「そうだねー、自分の場合はお金に興味ないってのが問題だねー。」

中学時代からあまり変わらないその欲の無さや、自分の道を突き詰めて進む様はまさに建築界のギーク(変人)と言えましょう。

GPLという目新しい切り口だけでなく、グッドデザイン賞も受賞している
「GPLの家」は練馬区にて実物が見ることができるようです。
http://www.g-mark.org/award/detail.php?id=35410&sheet=detail

gplhouse1

gplhouse2

gplhouse3

また、この「GPLの家」の設計図書、見積、シミュレーションモデルのソース
コードは以下からダウンロードできます。
http://njun.jp/files/GPL_LIST.html

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